からだとこころ なみのね相談室

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なみのね動作帖 ?猫たちと綴る日常?


2025年7月9日NEW

第12話:アビイちゃん、減薬大詰め!背中に愛を乗せて

今日はアビイちゃんの受診日。
毛並みは一面に薄茶色の草原。
あれほど目立っていた剥げも赤味も、いまや過去のもの。
どこが脱毛していたのか、よく見ないとわからないほどになりました。

それでも、心配は尽きません。
最近、トイレには朝晩、カレーのような濃いペースト状の便が、楕円形に残されるようになりました。
そして、以前よりも食べる速度がゆっくり。
食欲はあるけれど、少し気がかりです。

先生は言いました。
「この子の生来のものか、お薬の影響か。ステロイドは関係ないと思うけれど……」
そして、少し考えてから「下痢に効くお薬を出しましょう」と、5日分を処方してくださいました。

今度は、ステロイドの話に差しかかります。
「うーん、なくしますか」
と先生。思わず「えっ」と驚く私。
その顔を見た先生は
「じゃあ、2日に1回、4分の1錠で。ただし……効いているのか、という問題は出ますね」
でも私は、迷いなく答えました。
「私の安心材料として、2日おきでお願いします」

このように、減薬もいよいよ大詰めに入りました。
さらに、「ずっと飲み続ける」と言われていたアトピカについても、先生から
「今後の理想は、週に2日程度」「ただし、あくまで長期的な理想ね」
釘をさされながらも、希望が見えてきました。

そんなやり取りの最中、
なんとアビイちゃん、先生の背中にぴょん!と飛び乗りました。
しかも、きれいに刈り上げられた美しい生え際を、ぺろぺろ。
首筋に頭をすりすりと寄せて、親愛の情を惜しみなく表します。
先生は、びっくりして背中に手を回しつつも、満面の笑顔。
「肩に乗った子は初めてです」
「こんなにフレンドリーなアビシニアンは初めてですよ」

アビイちゃん、どこまでも、あなただけのやり方で、心を届けてくれるんだね。

2025年6月29日

第11話:ニャンず、少し変化の朝

朝の光が差し込む頃、リビングに小さな緊張が走った。
ぽーちゃんが、くるりと後ろを向いたアビイちゃんのお尻を……ちょい。
――いつものアビイちゃんなら、「ギャー!」と騒いで、ベッドの下に逃げ込むところ。

だが今朝は違った。
アビイちゃん、振り返りもせずに、 同じように前足で、ぽーちゃんのお尻を……ちょい。
ぽーちゃん、ぴくっ。
「くっ」とつぶやくような声を漏らして、ぱっと走り出し、
カーペットの下へもぐり込んだ。
それは逃げたというより――遊びの続きを誘うような動きだった。
すると――

どこから見ていたのか、ビオラちゃんがタタタッと駆け寄り、
ぽーちゃんが潜ったカーペットの上に、ぴょん。
……そこで終わらなかったのが、今朝のニャンず。

なぜか急にスイッチの入ったビオラちゃん、
「ダーッ!」と声が聞こえそうな勢いで廊下へダッシュ!
そしてすぐに戻ってきて、もう一往復。
目にもとまらぬ速さに、
ぽーちゃんもアビイちゃんも、ただただ静かに見守っていた。

……静かだけど、確かに動いている関係。
いつもの朝、でも、ちょっとだけ違う朝。
ニャンずの世界にも、風が吹いているらしい。

2025年6月18日

第10話:甘えの座布団はひとつだけ

夜も更け、寝室にやわらかな静けさが降りてくると、
まずやってくるのは、決まって金色の王子である。
アビイちゃん。アビシニアン。
薬師如来にして、甘えの申し子。
しなやかな身体は音もなく布団に乗り、
すうっとベッドの端に座る。
お母さんの目が開かれるのを、
ただ、じっと待つ。

「……来たの?」
声がかかれば、勝ちである。
背中をトントンされながら、尻尾を小さく揺らし、
ついにはお尻を向けて、夢のような時間が始まる。
うっとり、ふうっと、小さな吐息。
それは金髪の王子が、世界を許している合図だった。

だが、その夜。

ササッ――という布団のしわを裂く音とともに、
ビオラちゃんがやってきた。
マンチカン。地蔵菩薩にして、茶トラの跳ねっ娘。
まるで「遅刻遅刻ー!」とでも言わんばかりに、
お母さんの胸にすぽんと入り込んだ。

アビイちゃんの耳が、横に流れる。
「ぅぅ……」それは唸り声というよりも、諦めの音だった。
足元に風のような気配を残し、王子は去っていく。
その背中は、どこか誇り高く、どこか寂しげ。

ビオラちゃんは気づかない。
「ここ、ぬくぬくー♪」
お腹を見せて、お母さんの腕を小突く。
ごろん。すぽん。まるまる。

そして――追いかける。
去った兄の背を、たどるように。

お母さんの胸元に残されたのは、ほんのりとした体温と、
「どちらの気持ちも分かる」という、
人間の宿命のような切なさだった。

  「甘えの座布団は、ひとつだけじゃないのに――」
そうつぶやくと、今度は白と灰のハチワレが、
ぽてぽてとやってくるのだった。

2025年6月12日

第9話:アビイちゃんのぶるんぶるんナイト

アビイちゃんは、お気に入りのカーペットの上で「今夜もお願いね」とばかりに、目を細めてうずくまっていた。
飼い主の手が背中に触れると、ふう、と小さく吐息。
それが始まりの合図。トントンタイムである。

そこへ――
廊下の向こうから、ビオラちゃんが、音もなく、でもいつものように風のように素早く…
ぬっ!
「わたしもここでいいかな?」
というように、ちょこんとアビイちゃんの横に滑り込み。
アビイちゃん、一瞬の静止。
ビオラちゃん、期待に満ちた眼差し。
…そして、私は思うのです。
「さて、一人用のトントンが、二人用になるのか、交代制になるのか――それともお説教タイムになるのか?」

アビイちゃん、香箱座りで背を向け、
お尻をぴしっと二人に向けたまま、
しっぽぶるんぶるん。
――これは言葉にするとこうです:
「今は僕のトントンタイムなの。
わかってるよね? ……ねぇ、ビオラ?」

まさに、背中で語る男アビイちゃん。
香箱という静の構えに、しっぽの動という主張。

アビイちゃん、香箱座りのまま益々激しくしっぽをぶるんぶるん。
無言の「今は…察してね」モード。

そこへ、ビオラちゃん。前足をそろ?りと出して…
ちょん。ちょん。
アビイちゃん、少し振り返るそぶり。
…ビオラちゃん、引かない。
そして――!

??「ぱたっ」
小さな前足で、しっぽを両側からそっとホールド。
それも、あの短くて丸いおててで。
アビイちゃんのしっぽ、そこで一瞬止まる。
部屋に流れる、気まずくも愛らしい静寂。

――私はふと手を伸ばし、
そっとアビイちゃんのしっぽをつつみ込んだ。
細くて長いふさふさが、指に触れ、
ビオラちゃんの手と少し重なる。
静けさのなかに流れる、ぬくもり。

アビイちゃんは――
ちょっとだけ、しっぽをぴくっとして、
でもそのまま、じっとしていた。

「……これは、なんの時間?」
「トントンじゃない。でも、悪くない。」

三者三様のぬくもりが、ひとつに重なる瞬間。
アビイちゃんは、微かにしっぽを揺らしながらも、
怒りもせず、身じろぎもせず、
そのぬくもりを受け入れている。

2025年6月11日

第8話:ベルちゃん、やさしさを届けに来る人

ベルちゃん――それは、うちの猫たちにとって、
飼い主以上にやさしいまなざしを向けてくれる人。
去年は、月曜日から金曜日まで、雨の日も、雪の日も、嵐の日も、
毎日お昼に、ベルちゃんはやってきてくれた。

お昼ごはんと遊びの時間。
その光がなければ、きっと仕事を続けることはできなかったと思う。

今年は、私の勤務も非常勤となり、火曜日から木曜日だけの出勤に。
ベルちゃんも、それに合わせて週に3日、変わらぬやさしさを運んできてくれている。

本業は、老猫ホームの運営。今のところ、そこには一匹の老猫だけがいる。
名前は、こんちゃん。16歳の雄猫。
かわいい首輪をつけてもらって、まるでお殿様のように大切にされている。
ベルちゃんがこんちゃんを抱き上げると、
その姿はまるで、自分と同じくらいのサイズの猫を抱いているように見える。
それほどに、ベルちゃんは小柄でかわいらしい。
ジーンズ姿が似合って、首元がレースの黒いタートルネックがとても映える。

そんなベルちゃんには、秘密がある。
実は――漫画のお話を作るのが得意で、その物語には彼女自身が主人公として登場する。
白い質素なドレスを着て、スナフキンに恋する女の子として。
その物語の中のベルちゃんと、現実のベルちゃん。どちらも本当のベルちゃん。

うちの猫たちの中では、とりわけビオラちゃんがベルちゃんに一番甘える。
ぽーちゃんとアビイちゃんに飼い主を取られているような気がするのだろう。
だからこそ、ここぞとばかりに、ベルちゃんのひざに飛び乗って、とろけるような顔で甘える。
そしてベルちゃんは、静かに笑って、いつもの声でこう言うのだ。
「はいはい、ビオラちゃん、今日もかわいいね」
それは、やさしさを届けに来る人の声。
そして、猫たちの午後に吹く、あたたかな風の音。

2025年6月7日

第7話:アビイちゃん、大人への一歩

その日も、いつものように訪れた"トントンタイム"。
アビイちゃんは、私のそばで甘えん坊になる大切な時間。
でも、その平穏に割り込んできたのは、自由な風――ビオラちゃん。
ゴロンと横たわり、空気を読むことなく、中央にどっしり。
アビイちゃんは、ひとつ息をのみ、そっと距離をとった。
……が、しばらくして、また戻ってくる。
また離れ、また戻ってくる。

そして、ついに――

アビイちゃんは、ビオラちゃんの首筋を、そっと、なめた。
その瞬間、時間がやわらかくほどけた気がした。
ビオラちゃんはさらに大胆になる。ころんと横たわったまま、
短い足で、香箱アビイちゃんのお尻に「ちょん」。
もう一度、「ちょん」。
アビイちゃんは、ぐっとこらえる。
「うー……うー……」と、低く、甘えたような、怒ったような、なんとも言えぬ声をあげながらも、
香箱を崩さず、じっと耐えていた。

私はその間、アビイちゃんのしっぽを「よしよし」、
ビオラちゃんの足も「よしよし」。
アビイちゃんのしっぽは、ぶるんぶるんと細かく震えていたけれど――

ふと立ち上がり、そっと離れた。
でも、それで終わらないのがアビイちゃん。
しばらくして、また戻ってきて、今度は――
ビオラちゃんの首筋を、ぺろりとひと舐め。

なんということ。
静かな葛藤と優しさの末にたどり着いた、大人の一歩。
ああ、アビイちゃん。
きみは今日、ほんとうにえらかったよ。

2025年6月3日

第6話:今日は僕が寄り添う日

昼間、突然お腹が痛くなって、トイレに籠ることになった。
誰も呼んでいないのに、アビイちゃんがそっと戸の前に座っていた。
ただ、待っていた。何も言わずに。
そのあと、私は季節外れのこたつに入って横になった。
アビイちゃんは、ずっとそばにいてくれた。
こたつの上にじっと座っていたり、ときおり私の足元に降りてきたり。
まるで去年まで、ぽーちゃんがしてくれていたことを、
今日は「ぼくの番」とばかりに、アビイちゃんが引き受けていた。

一方のぽーちゃんは、どこにも見当たらなかった。
夜になってふと、下宿している息子の部屋をのぞくと、
ぽーちゃんはそこで、ベッドの上に静かに横たわっていた。
「ニャー」と、小さくつぶやいてくれた。
もしかして、どこか具合が悪いのかな。
でも今朝になったら、元気に「ニャっ」と私を起こしに来てくれた。
たぶん、アビイちゃんに表舞台を任せて、
ぽーちゃんはぽーちゃんで、見えないところで一緒に"病んで"くれていたのかもしれない。
静かに、ちゃんと、私の不調と共にいてくれたのだろう。

そして、ビオラちゃん。
どこにいたのか分からないけれど、
私が少し元気になるとすかさず、「遊ぼうよ!」と誘ってくる。
この子は、いつでも変わらない。
元気で、軽やかで、メンタルが一番強い。
私たちのちょっと揺れる日常を、そっと支える、賢い末っ子。

三匹三様の猫たちが、
それぞれのやり方で、私の一日を受け止めてくれていた。

声も言葉もいらない。
ただ、そのぬくもりが、からだの奥に染みわたるようだった。


2025年6月2日

第5話:叱られて、ふて寝して、気づけば一緒にうたた寝

昨夜のこと。
パソコンにつないだスピーカーのコードを、ビオラちゃんがかじろうとした。
思わず、私の声が上がる。
「ダメ!!」
珍しい強めの声だったからか、ビオラちゃんの動きがぴたりと止まる。
猫カフェで数か月だけ過ごした過去がある彼女には、「ダメ」という言葉の響きが、まだちゃんと届くのだ。

少し間を置いて、彼女はすたすたとケージの上の定位置へ。
そこには、ぽーちゃんがいつものようにどっしりと寝そべっている。
ビオラちゃんは、その隣のキャットタワーの上に移動して――ふて寝。
その背中は、「怒られたの、納得いかないもん」という小さなオーラを発していた。

その様子を、アビイちゃんが見ていた。
いつもなら、私がZOOM会議を始めると同時に画面の前にぬっと現れて、甘えたり、キーボードに乗ってみたりするのに――
なぜかその夜は、ぽーちゃんとビオラちゃんの並ぶキャットタワーの隣に静かに跳び乗って、落ち着いた様子で身を丸めた。

かくして、私のZOOM会議中。
猫たちは誰も騒がず、誰も妨害せず、同じ部屋でそれぞれの"うたた寝"に身をゆだねていた。

静かな夜だった。
叱られて、ふて寝して、気づけば、うたた寝。
3匹の心中は、それぞれ違っていただろう。
でもきっと、何かが通じ合っていた。

ちょっと賢くて、ちょっと甘えんぼうな、うちの猫たち。
その背中を見つめながら、私は小さく深呼吸をした。
ありがとう。今夜も、みんな、元気でいてくれて。

2025年6月1日

第4話:ぽーちゃんのノック

昼下がり、何かが軋んだ。
ぽーちゃんが、突如アビイちゃんに飛びかかった。
その瞬間、私は反射的に大声をあげてしまった。
空気が凍りついた。アビイちゃんは身を縮め、ビオラちゃんは遠巻きに見ている。
私は入れかけのコーヒーを手に、一室にこもることにした。
沈黙のなかで、私は仕事に逃げた。

しばらくして、ぽーちゃんの鳴き声が聞こえてきた。
それは、甘え声のノックだった。
一度、また一度。
そして、ついに私は根負けしてドアを開けた。

そこには三匹が並んでいた。
ぽーちゃんを飛び越えて真っ先に部屋に飛び込んできたのは、意外にもアビイちゃん。
そのあとをぽーちゃん、そしてビオラちゃんが続いた。
私は静かに呟いた。
「お母さんも悪かった。遊んで欲しかったんやね。ごめんね。」
ぽーちゃんは、自分のケージの上に登って、眠り始めた。
なでなでして去ろうとすると、ぽーちゃんはもっと、と手を伸ばした。

私は思った。
――いつもぽーちゃんには、我慢させてたのかもしれない。


ぽーちゃんは、生後3か月でわが家にやってきた。
まだ小さな体で、半年ものあいだ、独りでお留守番をがんばってくれた。
当時、私は正規の教職に就いていて、朝から夕方まで家を空ける生活だった。
そのあいだ、ぽーちゃんは静かに待ち、帰宅すると、必ず私の足元に寄り添ってくれた。
そんな日々のなかで、私たちは少しずつ家の空間を「ふたりの居場所」に変えていった。
この家には、私の母が認知症で施設に入所してから、掃除が行き届かずに放置されていた部屋がいくつもあった。
埃と沈黙に包まれていたその部屋たちは、ぽーちゃんにとっては立ち入り禁止の領域。
けれど私は、ぽーちゃんと過ごす毎日の中で、ひとつ、またひとつと、その扉を開け、掃除し、明るい空気を入れていった。
ぽーちゃんは、静かに見守ってくれていた。
ときには怖がりながらも、好奇心をもって新しい空間に足を踏み入れ、私と一緒にその部屋に「生きた時間」を吹き込んでくれた。
そうして作られてきた私たちの暮らしは、ただの生活ではなく、癒しと回復の道のりだった。
この家の空気が少しずつやわらかくなっていったのは、間違いなくぽーちゃんのおかげだ。

そんなぽーちゃんを、今日は叱りつけてしまった。
コーヒーは苦い。

2025年5月31日

第3話:午後3時のビオラウンド

午後三時、静かだった部屋に突如として響く「にゃーっ!」という高らかな声。
ビオラちゃんだ。食いしん坊の彼女にとって、この時間は"おやつの気配"が漂い始める重要な瞬間である。

小柄な体をいっぱいに使って、まるで弾丸のように走ってくる。
濃淡の茶マーブル模様の毛並みが、光を受けてキラリと揺れる。
「にゃーっ!」と私の顔を見て鳴き、くるっと振り返りながら走っていく--これが、ビオラちゃんのお得意パターン。
私が立ち上がるのを確認すると、跳ねるようにおやつ置き場の前に誘導し、ぴたりと停止。
その一連の流れるような動作を、私はひそかに「ビオラウンド」と呼んでいる。

まるで動作法のセッションで、クライエントが「したい」「伝えたい」という衝動を、からだ全体で表現する瞬間のよう。
欲求が明確で、それに向かう動作がまっすぐで、なおかつ楽しげ。
彼女の中には、原初的な「生の勢い」があふれている。

だが、そんなビオラちゃんにも"割に合わない瞬間"がある。
猫じゃらしで一番がんばって獲物をしとめても、おやつの順番は最後。
ぽーちゃんが一番、アビイちゃんが二番、ビオラちゃんは三番目。
くわえた猫じゃらしを口から外しても、文句ひとつ言わず、ちゃんと待っている。

このあたりにも、彼女の「柔らかい強さ」がにじんでいる。 欲しいものはちゃんと表現するけれど、流れの中で自分の位置も自然に受け入れている。
それは動作法でいうところの、「欲求と現実との調整」の感覚にもつながる。

ときどき、ビオラちゃんのまなざしに、無垢で聡明な魂が宿っているように感じる。

2025年5月30日

第2話:どっしり王、ぽーちゃんの静かな観察力(そして敏捷な逃げ足)

朝の支度でバタバタしている私の背後から、「じーっ」と感じる視線。
振り返ると、ぽーちゃんが仏像のようにどっしりと座り、こちらを見つめていた。

白と灰のハチワレ模様がきっちり整ったその顔は、まるで大日如来のような貫禄。
我が家の"大黒柱"--そう呼びたくなる落ち着きが、ぽーちゃんにはある。

けれど、その「王のような静けさ」は、実は一面にすぎない。
彼はとても繊細で、警戒心も強い。
物音がすれば誰よりも早く隠れ、だっこもあまり得意ではない。
なでなでも、へそ天でごろんとしながら「してもよいよ」と態度で示すくせに、ほんの少しで「もういいにゃ」と立ち去る。

そんなツンデレぶりにも、私は日々ほほえんでしまう。
動作法でいえば、ぽーちゃんは「静的調整」の名人であると同時に、身体の微細な変化を察知してすぐに反応する「動的センサー」でもある。
動かず、構えず、ただ"そこにいる"ことの力。
そして、自分の心地よさのラインを正確に守る力。

彼の態度はいつもニュアンスに満ちている。
私やビオラちゃんには、甘えるように身体をあずけてくるのに、アビイちゃんには意外なほど厳しい視線を向けることもある。
「わたしの領域を、侵しすぎにゃいでね」--そんな空気をまといながら。

でもあるとき、私が疲れて帰宅した夜、ぽーちゃんはふらりとやってきて、何も言わずに足元で寝転がった。
ひとこともなく、それでも明らかに「だいじょうぶかにゃ」と言ってくれている気がした。

動作法のセッションでも、言葉より先に「気配」や「身ぶり」が語るときがある。
ぽーちゃんは、まさにそんな存在。

今日も私は、彼から「からだで語ること」の深さを教わっている。

2025年5月29日

第1話:金髪王子と、ひとさじの緊張

朝の光が、レースのカーテン越しにそっと部屋に差し込むと、アビイちゃんが静かに目を覚ます。
うちの金髪王子--黄色みを帯びたスリムなアビシニアンで、繊細で甘えん坊な性格。

今朝も彼は、いつものように私の動きを観察している。
コーヒーの香りに混じって、ふと感じたのは、ほんのわずかな「緊張」。
あ、アビイちゃん、今日も皮膚をなめすぎてる。

少しずつ良くなってきたとはいえ、彼のグルーミングは「こころ」と「からだ」のバランスが崩れたときのサインだ。
臨床動作法でいえば、「自分の体をどう感じているか」「それにどう反応しているか」の微細なズレが、こうした"動作"となって現れる。

動作法の現場でクライエントに寄り添うように、私はアビイちゃんにも寄り添いたい。
まずは、声をかける。「アビイちゃん」
そして彼の横に、そっと座って、背中に手を置く。ただ一緒に、呼吸を整えるように。
すると、彼も少しだけ身体の力を抜く。
それはまるで、動作法のセッション中、クライエントがふと自分のからだに注意を向けた瞬間のよう。

猫と暮らしていると、こんな「こころとからだの交差点」に、毎日ふと出会う。

今日もまた、動作法の"前奏"は、アビイちゃんのささやかな動作から始まった。

2025年4月9日
京都文教大学の「ユング心理学」おもしろかったです!!
深層心理学における無意識の考え方、フロイトとユングの違いを改めて解説していただきました「意識が無意識と出会うことで超越的な力を発揮」して「創作活動」に向かう、という現象は、動作法にも通じるものがあるように思いました。
動作法の無意識は、意識とのグラデーション、連続的なものとして捉えています。
2025年4月8日
明日から、京都文教大学の科目履修性となり「ユング心理学」を受講します!!
継続研修会の申し込みは、4月27日まで。申込みが少なくて寂しいです。
2025年3月27日
2025年度大阪臨床動作法継続研修会を開催します。詳しくは「大阪動作療法の会」HPをご覧ください。



2024年11月24日
1月26日 第12回臨床動作法ワークショップを開催します。興味のある方はご参加ください。詳しくは「大阪動作療法の会」HPをご覧ください


2024年8月14日
8月30日~ 日本臨床動作学会ならびに研修会に参加します

2024年8月13日
8月の空き状況 ☆17日(土)午前 ☆24日(土)午後4時以降 相談に応じます。
2024年3月19日
おせち三段重仕立て(笑)この子は「びおらちゃん」 2023年2月3日生まれの女の子


2024年1月27日
24日は、この冬一番の大雪でした


2023年12月25日
カウンセリングルーム1に、スピーカーを設置。音楽が流れるようにしました。昨日はいいお天気だったので、雪見障子にプーさんの障子紙を貼ってみました。まだ4分の1です。



2023年11月26日 大阪動作療法の会研修会

12月9日には、定例の研修会もあります。

2023年11月14日 ぽーちゃん、ビオラちゃん、アビイちゃんが元気に走り回っています。3人?が元気だとほっとします。最近寒いので、いろんな暖房のタイマーをセットして出かけます。猫ちゃんたちが寒くありませんように。アビイちゃんは、薄茶色のやせ型の男の子です。一番たくさん食べているのに、太りません

2023年11月13日 伊吹山初冠雪!ビオラちゃんが朝ごはんを食べてくれないので、一日中心配でした。少し早く帰ると、待っていたように大量に吐きました。その後少し元気に。ビオラちゃんは、茶トラの子です!

2023年11月12日 ぽーちゃんの顎に黒い「にきび」ができて、なかなか治らないので動物病院に連れていきました。薬用ミューズで洗ってあげたら、かさぶたがポロリと取れました!ちなみにぽーちゃんは、トップページの写真の猫ちゃんの中の、白と黒の子です(^^♪